生物における主の主権

                                                 2010 6/10



            1. 生物体の素材の起源 ・・・ 必須微量元素の起源、L-アミノ酸の起源、炭素の特異性
            2. DNA転写のメカニズム(1) ・・・ DNAについて、mRNAの転写と たんぱく質の合成、いろいろな遺伝子
            3. DNA転写のメカニズム(2) ・・・ DNAの自己複製 と 突然変異、ヒトDNAの追跡調査
            4. 遺伝子研究の技法について ・・・ PCR法、人工ゲノム(?)、発生と不完全性定理
            5. 脳・神経のメカニズム(1) ・・・ 動物の脳・神経の比較、人の脳と心との関連
            6. 脳・神経のメカニズム(2) ・・・ 脳細胞の個数のチェック、コンピューターと意識、ヒトの大脳の特異性
            7. 霊・たましい・体の3層構造 ・・・ 人の3重構造、原罪による変容、キリストの十字架による救い


      (参考文献)  ・ ダーウィンのブラックボックス、マイケル・J・ベーエ、青土社、1998  ・ 天地創造の謎とサムシンググレート、久保有政、学研、2009
               ・ 崩壊する進化論、宇佐神 正海、マルコーシュパブリケーション、1993  ・ ナノテクノロジー・ハンドブック、日経BP、
               ・ POPな脳科学、小田 晋、同文書院、1996  ・ POPな遺伝子、大石 正道、同文書院、1995、 ・ DNAから見た日本人、斎藤成也、ちくま新書、2005



  1. 生物体の素材の起源



  (1) 必須微量元素の起源:


  生物体に必須元素は、水素(H)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、リン(P)、硫黄(S)、塩素(Cl)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、の他に、
  微量元素(必須)として、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、砒素(As、原子番号33)、セレン(Se、34)、モリブデン(Mo、42)、ヨウ素(I 、53)がある。
  このうち、鉄(Fe、原子番号26)やその直後の原子番号の Co(27)、Cu(29)、Zn(30)を除いて、鉄よりも原子番号が大きい AsSe(過酸化脂質分解酵素の働きを活性化する酵素)、Mo(代謝、造血)、 (甲状腺ホルモン)が、人間や動物にとって必須元素となっている。
  (現在の宇宙論によると、)ビッグバン宇宙がはじめに大きく膨張してすぐに急速に冷えたので、ほとんど水素のみが生成し、ヘリウムから鉄までの軽元素は、水素が集まってできた星の燃焼反応で生成した、と考えられている。 そして、これらの 鉄よりも原子番号が大きい重元素は、超新星爆発によって大量に放出される中性子を 鉄核、ニッケル核などが吸収してできる生成物であるから、”宇宙進化論”で考えるならば、生物が初めて登場したのは、太陽系などが形成され、その近傍での超新星爆発が完全に収まってからになる。

   ((参照) → 宇宙と地殻の元素の起源について:(下のコラム) )


  ところが、今年の5/10に発表されたばかりの、最も遠い銀河団96億光年 ・・・ 近赤外線望遠鏡で ハッブル効果による赤方偏移より推定・”赤い銀河”、東大)では、新しい星の誕生はほとんど無く (96億年前のはずなのに)すでに成長が止まっている観測結果だった。 ”ビッグバン理論”によると、宇宙の年齢は、宇宙の膨張から逆算して ハッブル定数の逆数: H0-1138億年 と推定され、差し引き、42億年以下の期間で ”ビッグバン”から宇宙が完全に冷え、初期の星の超新星爆発などがすべて終わり、ちりがほとんど宇宙空間から星に集まり、重元素が充分に混錬されなければならない事になる。(* 因みに、太陽の年齢46億年、地球の年齢45億年とされ、長くてもこの期間以内で、生物の”誕生”と”進化”が”自然発生的に”起こったことになっている。)

  一方、地球から非常に遠い天体には クエーサー(QSO(準恒星状天体)、活動銀河の核といわれる、赤方偏移 0.06〜6.4、8億〜180億(?)光年、銀河の100倍のエネルギーを放出し銀河の初期の姿とされる、中心に巨大ブラックホールがあるといわれる)がある。 このクエーサーがヘリウムよりも重い元素を含むことが知られているので、ビッグバンの後に最初のクエーサーが生まれるまでの間に、銀河が恒星を大規模に生み出す期間があったのではないかと言われてきたが、このような第1世代の星(超新星爆発するものを含む)が存在した証拠は 未だ発見されていない。(2004年現在) このため、最近では、宇宙学者の間でも、”ビッグバン”による初期宇宙のシナリオは大きく修正を迫られるかもしれない、と言われている。
  ( → クエーサーと初期宇宙の下 )
  (* クエーサーは、遠くにあるのではなく、 ブラックホールの重力場でスペクトルが赤方偏移しているのではないか、とも思われる(?))


  このように、いわゆる”ビッグバン説”による、鉄以降の重元素が生成して 地球に飛来し、地殻に広く混錬しうる期間は、せいぜい数億年と 非常に短い。(誤差を考えると、その期間はほとんど無い)
  これに加えて、超新星爆発の残骸について、予測では5000個以上ある第3ステージ(爆発から12万〜100万年)の残骸は一つも発見されていないという観測結果がある。(「失われた残骸のミステリー」) すなわち、宇宙は非常に”若く”、重元素が出来てからせいぜい12万年以内であることになる。



  (2) L−アミノ酸の起源:


  価の炭素原子に個とも互いに異なる原子や原子団が結合しているとき、この炭素原子を不斉(ふせい)炭素という。 不斉炭素原子をもつ分子を、それを鏡面に映した形の分子と重ね合わせることができず、互いに立体異性体の一つとなり、光学的性質だけが異なることから「光学異性体」と呼ばれている。 この光学異性体のうち、偏光の振動面を 時計回りに回転させるものを”右旋性(+)”、反時計回りに回転させるものは”左旋性(−)”という。
  一方、D、L−の「鏡像異性体(エナンチオマー)」は、光学異性体と無関係に定められている。 D-グリセルアルデヒドから導かれる光学異性体を D型 と定義。アミノ酸の場合は、L-乳酸の-OHを -NH3に置き換えて決める。
  (昔から良く知られているが、)生物体のたんぱく質を構成するアミノ酸は、ほとんどが L型で、旋光性は 右、左のものが存在するが、必ずそのどちらか一方になっている。糖ではD型が主流。(栄養価、薬の効果などの違いとともに、アミノ酸を味わうと、D と L では味が違う。 D型アミノ酸を利用する生物もわずかに存在するが、その鏡像異性を転換する酵素を持っている。)
  また、たんぱくα-ヘリックスのらせん構造は、型アミノ酸による二次構造であり、もし この中 に D型アミノ酸が混入すると、規則的ならせん構造はできず、正常な生理活動ができなくなる。
  アミノ酸やたんぱく質は、加熱等により変成して、不可逆的に”ラセミ体”になり、元に戻らない。(1952年の ユーレイとミュラーによる還元性大気から放電によってアミノ酸が生成した実験は、50%のラセミ体(混合エントロピー最大)の状態で、生物体の原料とはなり得ないものだった。現在、これを生命体の起源として支持する学者はいない。)
  したがって、”進化論”で考えるならば、まず100%純粋な 型アミノ酸が初めに原材料として存在していなければならない。(* もちろん、”原料”だけあっても、それを設計図どおり組み立てるところが絶対的に不可能であるが!)


  今年(2010年)の4/6、アミノ酸が生成する時 その旋光性を一方に偏らせる働きがある”円偏光”が、オリオン大星雲(1500光年)の中心部に 太陽系の400倍という広い範囲で照らしていることが報告され(by. 国立天文台などの国際チーム、近赤外線望遠鏡(南アフリカ))、 この左旋性アミノ酸が隕石に付着して地球に届いたのではないかと言われた。 しかし、地球上の生物体は、L型であるが、右旋性、左旋性は両方どちらかのアミノ酸によって構成されているから、旋光性が一方のみに偏ったアミノ酸があっても意味が無い ・・・ 報道では、”旋光性”と”D、L型”をごっちゃにしているだけ!

  * 因みに、グリシン(H2N・CH2・COOH)は不斉炭素をもたないので旋光性もD、L異性体も無い、 (+)-L-アラニン((+)- L - CH3H・(COOH)・NH2)、 (+)- L -グルタミン酸((+)- L - HOOC・(CH22H・(NH2)・COOH)、 (−)- L -フェニルアラニン((−)- L -C65・CH2H・(NH2)・COOH)、など  ・・・ 太字 C が不斉炭素


  マーチソン隕石(炭素コンドライト、1969、オーストラリア)に見つけられたアミノ酸の ee (鏡像体過剰率)はせいぜい 1〜2% にすぎない。実験室で円偏光を用いた光解離実験が行なわれているがその結果得られる ee はせいぜい数%以下 (最大 10% 程度)であり、しかも分解反応であるのでアミノ酸の量もごくわずかにならない限り意味のある ee はあらわれない。そのため現在の生体分子で示されるような 100% ee に近いホモキラリティー(鏡像異性体の一方への偏り)を得るためには、不斉増幅(不斉触媒を用いて不斉合成を行ったとき、生成物の ee が触媒の ee を上回る現象)が必要である。 小城らの研究では L体が優勢になるか D体が優勢になるかはどちらが先に結晶化するかという偶然で決まるとされており、L-アミノ酸の優勢は偶然に起きたと言うことになる。 なぜ すべてのアミノ酸(グリシンを除いた19種)についてもそうなるのかは、充分な説明が与えられていない。(1/219=1/520000の確率)

  したがって、現在も、”進化論”、”宇宙論”から見て、この自然界の -アミノ酸の起源は 依然としてとされている。 100%ホモキラリティーのアミノ酸が生物体を構成しているという事実は、「神様」が生物を「創造」された事の”しるし”である。



  (3) 炭素という元素の特異性:


  有機化合物は、いくつかの無機炭素化合物(CO2、CO、HCN など)を除いて、生物体に関与する一群の炭素化合物として、伝統的に この名で呼ばれている。
  現在118種の元素(同位体はもっと多い)の中で、炭素(C、 原子番号6、 12C(98.9%)、13C(1.1%)、14C(1.2×10-12))のみが唯一無限の多様性をもつ物質を作る材料になりうる。それは、炭素が、 -C-C-、-C-O-、-C-N- などの連鎖を任意の数だけ繰り返して共有結合できる唯一の元素だからである。 生体を構成する たんぱく質、核酸、糖、脂質もすべて炭素化合物である。

  * 同じ 14族(旧 WB族)の ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)なども 4本の結合手を持ち、有機ケイ素化合物の一群が知られているが、その種類は炭素有機化合物の比ではない。
  有機ケイ素化合物は、有機シラン系(C−Si結合)、シロキシド系(Si−O)、シリルヒドリド系(Si−H)などが実用化されている。(シラン: SiH4、 テトラメチルシラン: Si(CH3)、 シリコンオイル・シリコン樹脂: シラン類を加水分解して作られる シラノール(R3Si(OH))を脱水・縮合したポリマーで、シロキシド結合が主骨格の高分子化合物(-Si(-R1、-R2)-O-)で化学的に安定、 2重結合や3重結合をもつ有機ケイ素化合物(Si=C、Si≡Si)も知られているが非常に不安定)
  現在まで、SFの”ケイ素生物”のように、生体物質中でケイ素化合物が生化学的に代謝され、用いられている例は発見されていない。(珪藻のように、珪酸(SiO2)を無機物質のまま物理的に利用する生物は存在する)

  炭素の共有結合は、荷電子が 原子軌道から 分子軌道へ遷移することで形成され、その結合は非常に強く、安定である。(他の結合として、イオン結合、金属結合、水素結合、ファンデルワールス力 などがある) この共有結合のうち、単結合(-C-C-、-C-O-、-C-N- など)は σ結合のみが担い、 2重結合などの多重結合(-C=C-、-C≡C-、)や 芳香族(ベンゼン環など)や複素環式化合物(フラン環、ピリジン環など)の結合は 1個のσ結合と 1〜2個のπ結合が担う。 π結合の結合エンタルピー(= 結合の強さの目安)は、σ結合よりも小さい。( ex) エタンの水素が1個取れる反応: CH3CH2-H → CH3CH2 + H、 凾g = D = 101.1kcal/mol) ダイヤモンドの硬さや フラーレンC60、カーボンナノチューブの丈夫な構造は σ結合、グラファイト(黒鉛)の滑りやすさは面と面との間の π結合による。(cf. ケイ素はグラファイト構造をもたない) σ結合は結合軸で自由回転できるが、π結合は立体配座に固定され 分子は独特の形となる。

  ( cf. 水素結合はもっぱら、陰性原子上で電気的に弱い陽性 (δ+) を帯びた水素(Hδ+)が、周囲の電気的に陰性な原子(水の酸素、OH基の O など)との間に引き起こす静電的な力として説明される。 これは、生体高分子において水素結合は、たんぱく質が2次以上の高次構造を形成する際、また、DNA(核酸)の塩基同士が相補的に結びついて2重螺旋構造を形成するときに必要な、重要な駆動力となっている。)


  ここで、中性子の質量が、現在の値(1.6749×10-24g )と異なる場合を想定して、星による元素生成を考えてみる。
  @ 中性子の質量が0.1%軽い場合: 星における核融合反応が起こるための重力が小さくなり、原子核の生成が、せいぜい”ヘリウム反応”によってで きるヘリウムからホウ素あたりまでになり、次の”炭素反応”が起こらず、炭素(C、原子番号6)以降の原子核(C、N、O、F、などすべて)が生成 できなくなる
  A 逆に、0.1%重い場合: 核子が重力によって集まると、瞬時に潰れて、星の質量によって中性子星かブラックホールになってしまう。
  星が炭素原子核を生成できる許容範囲は、電子の質量では1%以内、核力の”強い力”で2%、”弱い力”で 数%であり、重力定数G、光速 c、電磁気的定数(真空の誘電率ε0、真空の透磁率μ0) なども、わずかに違うと炭素原子核ができなくなってしまうことが見積もられている。 (温度が下がると、炭素原子核は自動的に電子を”着て”、炭素原子になる。)

  したがって、「神様」が、生物体のために、「炭素」という最高の材料を、非常にデリケートな条件で”設計”されたことが分かるのである。神様が、”炭素”を作るために、他のいろいろな物理定数を定めた感じがする。



  (参考)
  * 白亜紀と第三紀の境界の地層中に大量のイリジウムを含んだ層があり、これをK-T境界線と呼ぶ。隕石が地上の鉱物よりもイリジウムを多く含有していること から、K-T境界線ができ、恐竜の絶滅が巨大隕石によると考えられている。(イタリア、デンマーク、アメリカ、日本等世界各地に分布)
  しかし、白亜紀と第三紀の境界とは、先カンブリア紀よりも上の層だから、「ノアの洪水」の真っ最中の出来事である。 隕石が直接、大洪水の原因になったのではないと思われるが、同時期の大洪水中に、石灰分を含む生物のいた海底が隆起して、海底に降り積もったイリジウムがその層の上に固定されたと考えられる。(1991年にユカタン半島北西部端チクシュルーブで、落下により直径100km以上、深さ15〜25kmの大クレーター、及び、円形の磁気異常と重力異常構造が確認された。)




                 トップへ戻る